住職の心情
2021年 10月
令和2年5月以来、全くのご無沙汰で、令和3年もあと2か月少々ともなれば、「アイツも脳梗塞でもやっちまったのじゃあないか」などといった風評を心配しなくてはならない事となりました。どっこい、記憶力は減退しましたが、まだしぶとく生きておったようです。
一体、このコラムにどれほどの「読者」がおられるのか、はなはだ心許ないのですが、昨年途中でコロナ騒動と入れ替わるように姿を消し、ついに年をまたいで、ひたすら沈黙。
この間、お寺の「公式ホームページ」を全面改定しました。最近では人はホームページをあまりパソコンでは見ないそうで、スマホでも見やすいように直したのです。境内案内にはグーグルのストリートビューを取り入れ、マウスを動かして、自分で楽しんでいたといえば、お叱りを受けるでしょう。
コロナはお寺の年中行事に大きな影響を与えました。昨年と今年は春の彼岸会、4月8日のお釈迦様の法要も無事お経を上げさせて頂きましたが、月末の池上本門寺の「千部会」法話は2年続きで中止となり、5月は2年連続で「虎御石祭り」は中止。40年にわたって実施してきた地域の行事ですが、狭い境内に沢山の人たちが集まるのはまさしく「密」。中止せざるを得ませんでした。
もっと広い世間のことと言えば、50年ぶり以上となるはずだった2020東京オリンピック・パラリンピックが1年延期され、「2021」として、今年7月から、「開催するな」との一部マスコミや、「言論人」と言われる人たちの意見を押し切って、それも、ついには無観客で開催されましたね。
この間、国内のコロナ感染者は4次、5次と増加し、病院はパンク状況となり、「自宅療養」を強要される人たちが激増し、ついにはお医者さんを待っているウチに容態が急変して亡くなる人たちが出始める事態とはなりました。
でも、10月に入るとようやく一端休息に向かい、一日の感染者がゼロの県も増え、東京でも百人以下の日が続き、ついに「緊急事態宣言」も終了しました。
で、オリンピック・パラリンピックも、あれほど批判していたマスコミが大々的に報道し、高視聴率番組の上位を埋め尽くす事態とは成りました。
1964年に敗戦後20年を経ずして開催された東京五輪の時も、ほとんどのマスコミは批判的で、「他にやることがあるはずだ」とか、「まだ早い」とか、「日本には開催資格がない」などと、否定的でした。ところが、いざ開始されると紙面は五輪一色。NHKが開催式を初の宇宙中継で世界に向かってカラー中継したこともあって、日本社会は計り知れないプラスを得、復興から発展へと向かったのです。今度はまた大きな影響を日本社会に与える事になるのでしょうか。
コロナについては政府がいろいろともたつきましたが、必死になって推進したワクチンだけは一日150万人以上が打つ日もあり、先進国の水準に追いつき、追い越しました。しかし、コロナのほうも次々と強力なモノに変異し、感染力も倍増で、軽く考えていた若者たちも次々に感染が広がったのです。後遺症も深刻な例が多発し、油断は禁物ですね。
ところで、お寺の夏と言えばお盆ですが、コロナに邪魔されて2年連続で檀家さんへ「お棚経」に回ることもならず、檀家総供養の「施餓鬼法要」も出席者を限定させていただき、檀家総会も大幅に省略せざるを得ませんでした。
この間、40年前作ったお寺の「縁起」がついに売りきれてしまいました。
といっても、なにしろ、寺の建物が全て建て替えられ、曽我堂や、新しい墓地の区画、納骨堂、動物墓苑も完成し、本堂の欄間には欅の板16枚に、彫刻師の渡邊親子が8年がかりでお釈迦様と日蓮聖人の御生涯を完成させているとなっては、まさしく新しく作らねばならなくなったのです。最近ようやく原稿と写真がそろってきました。
令和3年もコロナのおかげで、私自身のお坊さんとしての活動は1月始めの本門寺法類新年法要以降、宗務院の賀詞交換会も中止となり、お寺の行事は軒並み延期かパソコンを使った「リモート会議」で代用されました。私など、相手の顔も見えるし、声も聞こえるのですが、「話し合い」とは感じられませんでした。人と人がこのままテレビだけを見つめていると、議論を通じて考えを深め合うのは難しいと思ってしまいました。皆さんはどうでしょう。
ところで、コロナといえば私たちの反応も鈍かったですね。マスコミは専ら政府の対応のまずさを攻めていますが、そうした中で日本の医療関係者の方々の文字通り「命がけ」の献身にはただただ頭が下がるばかりです。
ところが、そういう方々の家族などに差別的な発言があると聞くと「情けない」という以上に、日本社会が「呪術にでも縛り付けられたのか」、と疑いたくもなりました。
70数年前、国土崩壊で終わった太平洋戦争で改革のチャンスがあったのに、陸海軍をなくしただけで、国を動かす官僚制度、人事制度、強力なリーダーシップ構築などの改革をほとんどやらず、いわば「その日暮らし」経済につっぱしってしまった日本。確かに経済規模世界第2位の国にはなりましたが、その「つけ」が今日の事態を招いたといえばむごい言い方でしょうか。
私は昨年11月24日、身延山大学の年1回の公開講演会の講師を仰せつかり、地元紙「山梨日日新聞」や全国紙の山梨県版に告知記事が出たと脅かされ、「コロナの次は何ですか」と題して、エラそうに日本人の忘れ物、みたいなことをお話しさせて頂きましたが、いろいろと難しい問題を抱えて、令和4年(2022年)が近づいてきました。来年こそ、良い年に成るよう皆様のご健康とご多幸をお祈りいたします。
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